超臨界流体とは?
超臨界流体とは,図1に示されるように臨界温度(TC)および臨界圧力(PC)を超えた非凝縮性高密度流体と定義される。表1に代表的な物質の臨界点を示す。各物質ともここに示される臨界温度・臨界圧力を超えた状態で超臨界流体となる。
図1 物質の状態図
表1 臨界温度および臨界圧力
物質 | TC[K] | PC[MPa] |
---|---|---|
二酸化炭素 | 304.12 | 7.374 |
水 | 647.14 | 22.064 |
メタン | 190.56 | 4.599 |
エタン | 305.32 | 4.872 |
プロパン | 369.83 | 4.248 |
メタノール | 512.64 | 8.097 |
エタノール | 513.92 | 6.148 |
これまでに超臨界流体として最も良く用いられている物質は,水と二酸化炭素である。両者はともに毒性や燃焼性がなく,自然界に大量に存在している。
二酸化炭素は臨界温度が室温に近いため、熱変性を起こしやすい天然物の抽出や分離によく利用される。水は臨界温度が高いため,加水分解や酸化反応といった反応場としての利用が数多く検討されている。
一般に,物質の溶解度は密度に大きく依存する。このため,密度がほぼ一定である通常の液体溶媒では,温度・圧力を変化させても大幅な物性値の変化は期待できない。
これに対し,超臨界流体は,圧縮率が極めて大きいので臨界圧力付近でのわずかな圧力変化に伴って密度が大きく変化する。つまり、超臨界流体は気液相転移がないため,温度と圧力を操作変数として、密度を理想気体に近い極めて希薄な状態から,液体に相当する高密度な状態まで連続的に変化させることができ,諸物性値の大幅な制御が可能となる。
ここで,他には見られない超臨界流体の特徴をまとめると以下のようになる。
- 圧力を操作変数として大きな密度変化が得られる。したがって,圧力変化のみで大きな溶解度差を得ることができる。
- 低粘性,高拡散性であり,液体溶媒より物質移動の面で有利である。
- 熱容量や熱伝導度が大きく,高い熱移動速度が得られる。
- 溶媒和の効果により,大きな反応速度が得られ,反応経路の制御も期待できる。
このような特徴を有する超臨界流体は,有機溶媒に代わる環境負荷の小さい新たな分離・反応溶媒として大きく期待されている。