部会長挨拶
昨今、国連SDGsやサーキュラーエコノミーに代表される持続可能な社会の構築やカーボンニュートラル達成に向けて、各種プロセスの効率化、プロセスの環境負荷の低減、製品や廃棄物のリサイクル、CO2の有効利用など、様々な取り組みが進められております。超臨界流体の利用は、これらの取り組みに貢献できる技術として注目されております。当部会では、超臨界流体、特に超臨界状態に限らず高圧状態のCO2や水を溶媒とした各種プロセスの実現に向け、基礎から応用まで幅広い分野の研究者・技術者が集い、各種イベント開催などを通じて交流を深め、本分野の技術発展と人材育成に努めております。
改めまして、内田前部会長から部会長を引き継ぎました宇都宮大学の佐藤です。部会員の皆様には、これまでの部会活動への積極的なご参画・ご協力に感謝申し上げます。超臨界流体部会は、前身の組織を経て2001年に発足し、以後約四半世紀にわたり、超臨界流体技術の発展を念頭に活動を進めて参りました。現在、部会員は約300名にのぼり、高圧が関わる物性や反応に加え、抽出や晶析などの各種単位操作から、機械学習やプロセス制御など、様々な専門性を持つメンバーが集結しています。活動は部会全体で行いますが、部会員は専門性に応じて4つの分科会(基礎物性、材料・合成、エネルギー、バイオマス・天然化合物)に所属しております。
具体的な活動としては、学会での部会シンポジウム開催、サマースクール(講演・見学・懇親会を一体とした夏の恒例行事)、基礎セミナー(数十名の講師による基礎から応用までを網羅した講演会)、年2回のニュースレター発行、化学工学年鑑での執筆を毎年行うほか、不定期で各種シンポジウムなどを開催しております。これらの運営には分科会が深く関わっております。
最近特に力を入れている取り組みとして、「国際連携」、「社会実装」、「対外発信・連携」が挙げられます。我が国が超臨界流体分野におけるトップランナーであることは間違いありませんが、先人たちの努力にも関わらず国際的な発信力がそれに追いついていない現状を憂慮しております。私自身も大いに反省すべき点と認識しており、改めて国際連携担当を中心に、部会にて国際学会を主催するなど国際プレゼンスの向上と国際人材の育成に努め、海外展開力の強化を図って参ります。また、超臨界流体技術について、「優れた技術はあるが実用化が難しい」というイメージを持たれることもあります。しかしながら、環境負荷低減等への社会的ニーズが高まる中で、この技術の社会実装が喫緊の課題であることは皆様も共通認識されていることと思います。部会としても、社会実装担当やTLO担当を中心に、産学官にて社会実装を気軽に議論・相談できる場の構築を進めております。対外発信・連携に関しては、出版・学会・部会連携担当を中心に、最近の技術進展を反映した書籍の発刊準備を進めると共に、シンポジウムの共催や協賛を通じて他学会・他部会との連携をさらに深めて参ります。
私共は、これらの取り組みを通じて超臨界技術の基盤をより強固なものとし、社会実装の促進によって技術の優位性を広く社会に伝え、ひいては当分野の国際的な発展に貢献していきたいと考えています。今後とも、様々な方と力を合わせて活動を進めて参りますので、引き続きご支援ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
企業の皆様へ
「超臨界流体に興味があるものの、どこに相談すれば良いかわからない」とお考えの方に向けて、昨年度発足した超臨界流体部会TLOが、当ページ内の「相談窓口」を担当しております。ぜひお気軽にご利用下さい。また、当部会では、実際の取り扱い経験の有無を問わず、高圧技術に興味をお持ちの方のご入会を歓迎しております。各種イベントを通じて、当該分野に関する情報を入手頂き、部会員とのネットワークを構築して頂ければ幸いです。部会員は当部会内にとどまらずのみならず、様々な分野に幅広いネットワークを有しておりますので、今後の展開にもぜひお役立て下さい。ご興味をお持ち頂けましたら、遠慮なくご入会下さい。
研究者(産・官・学)の皆様へ
当部会では、様々な組織との連携を積極的に進めております。例えば各種シンポジウム・セミナーの協賛や、懇親会の共同開催などのご要望がございましたら、どうぞお気軽にご相談下さい。また、高圧技術に興味がある方はもちろん、現在所属されている部会に加え、サブ的な位置付けで当部会にも所属して頂くことも歓迎します。普段と違う多様な分野とのメンバーとの交流を通じて、研究活動のさらなる発展につなげて頂ければと思います。
学生の皆様へ
学生部会員の皆様には、引き続き学会発表や各種セミナーに積極的に参加して頂き、当該分野に関する知見を広げて頂ければと思います。読んだ論文に名前がある先生と実際に会えるというのが、学会活動の一つの醍醐味です。「こんな顔の先生がこの研究をされていたんだ」と具体的なイメージが持てることで、研究の面白さや深みも増すことと思います。また、化学工学会に入会したものの、どこの部会に所属したら良いか迷っている方も、超臨界流体に関する研究経験がなくても遠慮なく当部会を選んで頂いて問題ありません。部会に所属することで学会の仕組みも理解することができ、将来、社会人として仕事に取り組む際も大いに役立つはずです。ぜひ積極的に当部会を活用して頂きたいと思います。
2025-2026年度 超臨界流体部会・部会長
佐藤剛史(宇都宮大学)