ロードマップ
平成17年1月策定
1.目的
本部会は化学工学が関与する超臨界流体関連研究分野の学会代表として,当該研究分野(超臨界流体の基礎と応用)に関する知識の交換,情報の提供などを行う場となることにより,当該研究分野の進歩普及を図り,もって国内外の学術の発展と産業の発展に寄与することを目的とする。
2.目標
超臨界流体部会は,現在種々の学協会に分散している超臨界流体関連の研究者が,一同に会することができる組織・機会の提供を可能とする化学工学会所属の専門組織となる。また,そのような機会を通して,多方面からの超臨界流体技術の体系化を図ることになり,大きく超臨界流体研究の一層の進展を促進するとともに,化学工学会の活性化にも寄与することを目指すものである。
具体的な目標は次の5つに集約させる。
- 会員への情報サービス
- 超臨界流体に関する専門家の育成
- 「超臨界流体」分野の確立と社会認知
- 超臨界流体技術の普及・社会還元
- 新規研究テーマの提案
3.背景
20世紀は,科学の世紀と言われるように多くの現象・物質が発見・発明され,大量生産・大量消費を介して人間活動を便利で快適なものにしてきた。しかし,一方で自然界の生産・再生能力を遥かに上回る資源・エネルギー循環と大量の廃棄物を生み出し,危機的な地球環境問題を引き起こすに至っている。
これに関しては,京都会議(COP3),ハーグ会議(COP6)での宣言にあるように,CO2の排出量を低減するとともに,自然界の資源・エネルギーが有限であることを認識し,できるだけ人間社会の中で資源・エネルギー循環を行い,自然界への廃棄物を最小限にする社会システムとそれを実現する科学技術の開発が必要不可欠である。
また,2001年からは「有害性のある化学物質の環境への排出量及び廃棄物に含まれての移動量を登録して公表する仕組み」として化学物質管理促進法(PRTR法,MSDS法)が実施されることになっている。環境庁では,内分泌攪乱化学物質問題への対応方針について,-環境ホルモン戦略計画SPEED’98―を1998年5月に発表している。
このように,化学物質の危険性を認識した使用が義務づけされるようになっており,趨勢としてはできるだけ安全な化学物質を使用し,有害性のある化学物質の使用量を抑制する方向にある。
このような背景で,環境問題に直結した化学技術研究者が1994年のアメリカ化学会で「グリーンケミストリー」の概念を提案,OECDでも1998年に化学品リスクマネージメント委員会で「OECDサステェイナブルケミストリープログラム」が提案された。
グリーンケミストリーは,それ自体の主眼は化学反応であるが,広義には各種プロセスの省エネルギー化,さらに化学プロセスにおける環境負荷低減および環境調和型エネルギー需給構造構築のための反応プロセスの高効率化などを挙げている。この中で化学プロセスに関する技術開発に際してのキーポイントの一つに,溶媒の選定がある。もちろん,この溶媒としては,環境調和型の溶媒であり,その代表がCO2および水といえる。
グリーンケミストリーにも,超臨界水や超臨界CO2中での有機合成や重合反応が取り上げられており,またミレニアムプロジェクトでは超臨界水を用いたPCB,ダイオキシンなどの完全分解技術開発が取り上げられている。
このように,超臨界流体技術は我国が世界の中でもイニシアチブがとれる可能性の高い先端的技術といえるが,高温高圧という条件から基礎データが少ない,工学的基盤の整備が十分ではないという理由からプロセス実用化・普及が遅れているのが現状である。
化学工学会には,平成2年,研究部門に「超臨界流体高度利用特別研究会」が設置され,化学工学が関与する超臨界流体の基礎ならびに応用に関する関連研究分野において,活発な活動を行ってきた。
ところで,我が国の超臨界流体研究は,平成4年~7年までの文部省科学研究費補助金重点領域研究「超臨界流体の溶媒特性の解明とその高度な工学的利用」を契機として理学サイドから工学サイドまで広い範囲にわたって先駆的成果が得られ,世界的にも高い評価を受けることとなった。
その結果,種々の学協会(日本化学会,高圧力学会,日本熱物性学会など)で超臨界流体関連のシンポジウムや分科会が開催されることとなり,その参加者のかなりの部分が重複するために同時期開催による参加者の減少という弊害も生まれつつあった。
また,AIChEとのジョイントシンポジウムや1997年のThe 4th International Symposium on Supercritical Fluidsなどの実施の際には,超臨界流体国際学会に対する学会レベルでの受け皿がないため特別研究会が対応してきたが,海外からは化学工学会としての積極的な支援が求められていた。
さらに,最近では通産省先導研究など超臨界流体関連国家プロジェクトにおいて調査・評価などが化学工学会に研究委託されてきた。
そこで,今後,超臨界流体に関する専門集団を組織することで,化学工学会のみならず広く超臨界流体研究の進展・実用・展開を図るための研究受託あるいはプロジェクト提案をすることが超臨界流体部会設立の背景といえる。
4.目標達成のためのアクションプラン
2で掲げた5つの具体的目標達成のため,各項目について以下のようなアクションプラン2年間を1スパン(幹事交代期間)で実行していく。
① 会員への情報サービス
- ニュースレター(電子レター)の発行
- ホームページ(URL)の作成
(最新情報,会則,組織,諸連絡などの情報発信)
(行事情報などは,個別サイトへのリンク作成) - 会員メーリングリスト作成
- 見学会,研究会,セミナー,スクールなどの主催
(年会・秋季大会でのシンポジウム開催)
(定期的サマースクール開催,不定期見学会)
② 超臨界流体に関する専門家の育成
- 化学工学会各センター各事業への協力
(人材育成センター:高等教育,産学連携,資格制度)
(編集委員会 :エディター,編集委員,TOPIC寄稿,年鑑執筆) - 超臨界流体基盤データ整備
- 主催シンポジウムの開催・共催・協賛
(部会アワード表彰,学生アワード表彰)
(関連学協会とのシンポの共催・協賛) - 学会各賞の推薦
(学会賞,研究賞,奨励賞,功労賞の推薦,技術賞候補選抜)
③ 「超臨界流体」分野の確立と社会認知
- 国際的シンポジウムの開催
(ISASF国際組織との協力,AIChEとのジョイントシンポジウム) - 他の学会,産業界との共同事業<
- 印刷物(学術本,雑誌など)の刊行(会員ネットワークによる執筆)
④ 超臨界流体技術の普及・社会還元
- ICHEMなど展示会などへの参加
- 会員個々での業績の一般公開(新聞,雑誌への公表)
- 各種学会・産業界との産学連携プロジェクト提案<
- プロジェクトに対する専門組織としての評価などの協力
- 各種委員会への委員推薦
⑤ 新規研究テーマの提案
- 研究プロジェクトの提案・組織
- 産総研の産学連携研究組織への協力(研究プロジェクトへの展開)
5.化学工学会における位置づけ(役割)
- 化学工学会が関与する超臨界流体関連分野の学会代表として,現在の超臨界流体が関係する基礎と応用技術の拡大に合わせた学問の体系化を行う。
- 部会の提供する超臨界流体関連の産学官連携の場,他の学協会との共同開催行事,異分野交流会などの機会を通して,新たな化学工学会会員の開拓・会員増強に資する。
- 部会に関連したプロジェクト提案に基づいた受託事業により,学会の財政基盤強化に貢献する。
- 学協会,支部,部門を越えた共同シンポジウムやセミナー,人材育成センター・情報サービスセンターなどの企画に対する支援を行うことにより,化学工学会の存在PRならびに人材育成・技術継承に寄与する。
6.実現のための課題
- 部会運営のための財政基盤の確立
- 企業会員の部会活動への積極的参加
- プロジェクト提案の活発化<
- 会員情報の円滑管理とその運営
7.運営体制(現在)
部会長 1名
副部会長 (3名:産学)
幹事(39名)
分科会
- 基礎物性
- バイオマス・天然化合物
- 材料・合成
- エネルギー
監事(2名)
相談役(2名)